後悔しない中古車選び:年式・走行距離が維持費に与える影響とチェックポイント
はじめに:なぜ中古車の維持費は気になるのか
車の購入費用を抑えるために中古車を検討される方は多くいらっしゃいます。特に年金生活においては、大きな支出はできるだけ抑えたいと考えるのは自然なことです。しかし、中古車は購入費用は抑えられても、その後の維持費が思った以上にかさんでしまい、結果的に新車よりも費用がかかってしまった、というケースも耳にします。
中古車の維持費に大きく影響するのが、「年式」と「走行距離」です。これらの要素が、車の部品の劣化具合や将来的な修理リスク、さらには税金や保険料といった固定費にも関わってくるからです。
この情報が多岐にわたり、どれを信じれば良いか分からないと感じている方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、年式と走行距離が車の維持費にどのように影響するのかを分かりやすく解説し、後悔しないための賢い中古車選びのチェックポイントをご紹介します。
年式が維持費に与える影響とは
車の「年式」とは、その車が初めて登録された年を指します。年式が古いほど、車齢(車の年齢)が高いということになります。年式が維持費に与える主な影響は以下の通りです。
- 部品の劣化: 車はゴムやプラスチック、金属など様々な部品で構成されています。これらの部品は、たとえ走行距離が少なくても、時間の経過とともに少しずつ劣化していきます。特にゴム製の部品(例:タイヤ、ワイパーブレード、エンジンルーム内のベルト類、サスペンション部品のブッシュなど)は、硬くなったりひび割れたりしやすい性質があります。これらの劣化は、乗り心地の悪化や異音の原因となるだけでなく、放置すると他の部品への負担を増やし、大きな故障につながる可能性もあります。
- 修理費の増加傾向: 年式が古くなると、部品の劣化による交換や修理が必要になる頻度が増える傾向があります。また、特定の車種の古い部品が生産中止になり、入手が難しくなることもあります。その場合、中古部品を探したり、修理に時間がかかったりすることで、修理費用が高額になる可能性も考えられます。
- 税金の負担増(重課): 日本の自動車税(種別割)や自動車重量税には、「重課」という制度があります。これは、環境負荷が大きいとされる一定年数以上経過した車に対して、税金が割増しされるものです。ガソリン車・LPG車は初年度登録から13年、ディーゼル車は11年を経過すると、税金がおおむね15%程度重くなります。これは、毎年かかる費用として無視できない負担となる可能性があります。
- 燃費性能: 自動車の燃費技術は日々進化しています。一般的に、年式が新しい車ほど燃費性能が高く設計されています。年式の古い車は、現在の基準で見ると燃費が劣る場合があり、ガソリン代の負担が増える可能性があります。
走行距離が維持費に与える影響とは
車の「走行距離」とは、その車がこれまでに走った総距離です。走行距離が多いほど、車の各部品が使われてきた量が多いということになります。走行距離が維持費に与える主な影響は以下の通りです。
- 消耗部品の交換: タイヤ、ブレーキパッド、バッテリー、エンジンオイル、オイルフィルター、エアクリーナーなど、走行距離に応じて定期的な交換が必要な部品があります。走行距離が多い車は、これらの部品の交換時期が近づいているか、すでに交換が必要な状態である可能性が高まります。これらの交換には費用がかかります。
- 主要部品の寿命: エンジン、トランスミッション(変速機)、サスペンションといった車の主要部品にも設計上の寿命や耐久性があります。一般的な目安としては、10万キロメートルを境にこれらの部品に不具合が出やすくなると言われることがあります(もちろん、日頃のメンテナンス状況によって大きく異なります)。主要部品の修理や交換は高額になりがちです。
- 中古車としての信頼性評価: 中古車市場では、一般的に走行距離が少ないほど「状態が良い」「故障リスクが低い」と評価される傾向があります。走行距離が多い車は、その分価格は安くなることが多いですが、将来的な修理費用のリスクを考慮して検討する必要があります。
具体的な費用への影響と見極め方
年式と走行距離が古い・多い車は、以下のような維持費が増える傾向があります。
- 修理費・部品交換費: 年式・走行距離が増えるほど、予期せぬ修理や部品交換の必要性が高まります。特に、エンジンの不調やミッションの滑り、エアコンの故障などは高額修理につながりやすい項目です。
- 車検費用: 車検時には、車の状態を検査し、安全基準を満たさない部品や劣化が進んだ部品は交換が必要です。年式や走行距離が多い車は、交換が必要な部品が増える傾向があるため、車検費用が高くなることが多いです。
- 税金: 先述の通り、年式によっては自動車税・自動車重量税が重課されます。例えば、総排気量1リットル超1.5リットル以下の自家用乗用車の場合、通常は年間30,500円の自動車税ですが、13年経過すると約35,100円に増額されます(2019年9月30日以前に初回新規登録を受けた車の場合)。
- 保険料: 年式が古い車の場合、車両保険の保険料が高くなる、あるいは加入できない場合があります。また、最新の安全運転支援システムなどが搭載されていないため、安全装備割引などが適用されず、任意保険料が高めになる可能性もあります。
ただし、年式が古くても走行距離が非常に少ない車や、逆に年式が新しくても走行距離が多い車など、様々な状態の中古車があります。どちらが良いかは一概には言えません。重要なのは、車の年式と走行距離のバランス、そしてこれまでのメンテナンス状況を見極めることです。
例えば、年式は古いが走行距離が極めて少ない車は、部品の経年劣化は進んでいるかもしれませんが、機械的な消耗は少ないと考えられます。逆に、年式は新しいが走行距離が非常に多い車は、主要部品は新しいものの、集中的な使用による消耗が進んでいる可能性があります。
後悔しないためのチェックポイント
年式と走行距離を踏まえて中古車を選ぶ際に、後悔しないために確認すべき具体的なポイントをまとめました。
購入前のチェックポイント
- 希望車種の一般的な寿命や故障しやすい箇所の情報を集める: インターネットの口コミサイトや専門誌などで、検討している車種の年式や走行距離が進んだ際にどんな不具合が出やすいか、おおよその情報を調べておくと参考になります。
- 車検記録簿や整備記録簿を確認する: これまでの点検や修理の履歴が記載されています。定期的にしっかりとメンテナンスを受けていた車かどうかを確認できます。記録がしっかり残っている車は、状態が良い可能性が高いと言えます。記録簿がない車は、これまでの管理状況が不明なため、慎重な検討が必要です。
- 現車の状態を注意深く確認する:
- 外観・内装: 目立つ傷や錆がないか。内装に過度な使用感やタバコなどの強い臭いがないか。
- エンジンルーム: オイル漏れの跡がないか。ベルト類やホース類にひび割れや劣化がないか。
- エンジン始動: エンジンがかかりにくい、異音、白煙や黒煙が出ないか。
- 試乗: 可能であれば必ず試乗しましょう。
- エンジンの吹け上がりはスムーズか。
- ブレーキはしっかり効くか、異音はないか。
- ハンドル操作に違和感や重さはないか。
- 走行中に異音(特に足回りや下回りから)はないか。
- オートマチック車の場合は、変速ショックが大きすぎないか。
- エアコンは正常に作動するか。
- 信頼できる販売店を選ぶ: 保証制度がしっかりしているか、購入後のアフターサービス(メンテナンス、修理など)に対応しているか確認しましょう。認証工場や指定工場を持つ販売店であれば、専門的な診断や整備を受けられるため安心です。
- 修理リスクを考慮した予算を確保する: 年式が古かったり走行距離が多かったりする車は、購入後に修理が必要になる可能性を考慮し、ある程度の費用を予備費として準備しておくことをおすすめします。
- 税金や保険料を具体的に見積もってもらう: 年式による税金の重課や、車両の状態による保険料の違いなどを、購入前に販売店や保険代理店に確認してもらいましょう。
購入後のチェックポイント
- 定期的な点検とメンテナンス: 専門家による定期的な点検や、消耗品の適切なタイミングでの交換が、車の寿命を延ばし、将来的な高額修理を防ぐために非常に重要です。販売店や整備工場と相談し、ご自身の車の状態や使い方に合わせたメンテナンス計画を立てましょう。
- 日常的な確認: タイヤの空気圧、エンジンオイルの量、冷却水の量、ランプ類の点灯などを日頃からご自身で確認することも大切です。異常の早期発見につながります。
- 信頼できる整備工場を見つける: 購入したお店以外でも、自宅の近くなど、気軽に相談できて信頼できる整備工場を見つけておくと安心です。
まとめ:ご自身の使い方と予算に合わせて賢く選ぶ
中古車の年式と走行距離は、その後の維持費に密接に関わる重要な要素です。一般的には、年式が新しく走行距離が少ないほど維持費がかかりにくい傾向がありますが、その分購入価格は高くなります。
一方で、年式が古い、あるいは走行距離が多い車は購入価格は抑えられますが、メンテナンスや修理にかかる費用が増えるリスクがあります。しかし、過去のメンテナンスがしっかり行われている車であれば、年式や走行距離の割に良い状態を保っていることもあります。
後悔しない中古車選びの鍵は、「年式」と「走行距離」だけでなく、「これまでのメンテナンス履歴」や「現在の車両の状態」を総合的に判断することです。そして何より、ご自身の車の使い方(どれくらいの頻度で、どれくらいの距離を走るか)や、車の維持にかけられる予算をしっかりと考慮し、バランスの取れた一台を選ぶことです。
もし判断が難しいと感じる場合は、信頼できる自動車の専門家や、経験豊富な知人などに相談してみるのも良いでしょう。この記事が、あなたの賢い中古車選びの一助となれば幸いです。